臥(ふせ)蝶丸文様 〜〜「光る君へ」安倍晴明の衣装より

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安倍晴明あべのせいめいは占い師 ? 科学者 ?

安倍晴明あべのせいめい
あやしく強大な力を持つ占い師…
映画で活躍する彼には そんな印象を抱きますが、実際の晴明は どんな人物だったのでしょうか?

写真 晴明神社と晴明像

陰陽師おんみょうじとは

中国の思想に「陰陽五行説いんようごぎょうせつ」というものがあります。
「陰陽」とは、昼と夜・明と暗・上と下など、物事には全て「陰」と「陽」があり、互いに対立したり依存しながら変化していくという考え。
「五行説」とは、万物は木・火・土・金・水の5つに分けられ、お互い助け合ったり、打ち消し合ったりしながらバランスをとっているという考え。
平安時代初期、「陰陽五行説」を起源として、日本人の思想に合うよう発展させた技法ができました。
それを「陰陽道おんみょうどう」と言います。
陰陽道をつかさどっていたのが陰陽師です。
やがて彼らは、国家の運営に欠かせない重要な役割を担っていくのです。

陰陽師は国家公務員

陰陽師は現代の役職で言うと国家公務員でした。
所属の省庁となる「陰陽りょう」は、帝の住まい“内裏だいり”の向かいに設置されるほど重要な部署でした。

大河ドラマ「光る君へ」は、この陰陽寮での星読みのシーンから始まりました。
陰陽師の主な仕事は、観測と統計です。
まず水時計で正確な時刻を計ります。
その時刻を基に、星の動きなど天文観測をします。
そして、彗星すいせい(流れ星)・日食など普段とは違う自然現象や災害などが起これば、データとして記録し続けました。
この膨大なデータから、次に来る災害を予測したり、解決法を考えたり、生活の指針となる暦を作りました。
いわば、陰陽師とは天文学・統計学・暦学の研究者でした。
平安時代において、陰陽師は最新の科学者だったのです。
当時の星図を現代の技術で分析したら、天体望遠鏡がなくても驚くほど正確だったそうです。

写真 「光る君へ」第1話より
陰陽師はデータから日食・月食の日を予言、見事に当てて、人々の信頼を得ていきます。
当時、星の動きや気象の異変は、悪い政治に対する天からの警告と考えられていました。
天文密奏てんもんみっそう」といって、空の異変を察知した時は真夜中であろうとすぐに帝に報告しなくてはいけません。
そのために内裏の向かいで仕事をしていたのです。

安倍晴明

安倍晴明には不思議な伝説が多く残っています。
・一条天皇が病で伏せっていた時、晴明がみそぎを行うと たちまち天皇は回復された。 ※ 水で体を洗い清めること 
・雨の降らない日が続き干魃かんばつによる被害が大きくなったとき、晴明が雨乞あまごいの儀式を行うと直ちに雨が降った。

中でも、晴明が賞賛された出来事がありました。
火災により再建した内裏だいりに一条天皇が移ろうとしたのですが、あいにく占い的に悪い日が続き、なかなか引越しができません。
晴明は「反閇へんばい」という秘法を使って、引っ越しを可能にしました。
反閇へんばいとは、北斗七星を描くように歩くことで、悪いことを良いことに変えてしまう力があるのだとか。
「光る君へ」でも晴明が反閇へんばいをしているシーンがありました。
こうして、晴明は道長の絶大なる信頼を得たのです。
晴明は堂々と言い切ることで、無理やり伝説を作ってしまったという説もありますが、数々の逸話を残し、84歳で人生の幕を閉じました。

写真「光る君へ」第32回より

平安の貴族の生活は不自由だった

平安時代の貴族は、陰陽師の作る暦を基に生活していました。
暦には、洗髪をしていい日、爪を切っていい日、体を洗っていい日など、事細かに決められていました。
髪や体を洗えない日が続いてしまう事もあります。
方角も大切で、この日は東へ行くと悪いことが起こるとか、あるいは悪夢を見ると外出してはいけないとか、こと細かく決められていました。
貴族たちは不自由な生活を送っていたのです。
皆守っていたかと言うと そうでもなく、会いたくない人や行きたくない日などには都合の良い言い訳になっていたようです。
が、道長は暦を律儀りちぎに守っていたそうです。

臥蝶丸ふせちょうのまる文様

臥蝶丸文様とは

「光る君へ」での安倍晴明の衣装の文様は「臥蝶丸文様」です。
臥蝶丸文様
この優雅で愛らしい文様は、別名「浮線綾ふせんりょう文様」とも呼ばれる代表的な有職ゆうそく文様です。
※ 平安時代からの宮廷や公家が用いた伝統文様
円を4分割して それぞれに、蝶が羽を広げて休んでいる(伏している)ように花びらを配置した図柄です。

「光る君へ」での同じ文様

源雅信みなもとのまさのぶ(倫子の父・道長のしゅうと)も、晴明と同じ文様の衣装でした
そして、越前時代の“まひろ”の衣装も、中心部分が少し違いますが同じ「臥蝶丸文様」でした。
とても華やかで美しい衣装でした。
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