文様七変化 〜〜「光る君へ」まひろの衣装より

「光る君へ」での“まひろ”は、人生の節目により衣装が変わっていきました。
『源氏物語』ゆかりの紫色にちなみ、物語を書き上げた時の女房装束にょうぼうしょうぞく唐衣からぎぬを濃紫のゴールとして、薄い紫の重ねの差し色から、徐々に広く濃く変化していったそうです。
目次

裳着もぎ窠中唐花かのなかにからはな文様

まひろの裳着もぎ(女性の成人式)の衣装です。
まひろの家は貧しかったため、親類の家から十二単衣ひとえを借りた設定です。

文様は「窠中唐花かのなかにからはな文様」です。
窠中唐花かのなかにからはな文様
窠中唐花かのなかにからはな文様の「」とは、鳥の巣や動物の穴の巣を意味します。
別名「木瓜文もっこうもん」とも呼びます。
この図柄が、御簾みす帽額もこうの文様に使われていたことから、似た音の「木瓜もっこう」が当て字となりました。
うりを輪切りにした断面に似ているため、その名がついたという説もあります。

連続して弧を描きながら円の形にした文様です。
巣に似ているので、子孫繁栄の願いが込められています。

五節ごせちの舞 … 向蝶むかいちょう文様

平安時代の朝廷は年中行事を大切にしました。
五穀豊穣ごこくほうじょうを祈りながら祝う宮中祭祀さいしの一つに「五節ごせちの舞」があります。
4人の女性が舞をささげる式典です。

「光る君へ」では、幻想的な雰囲気の中、まひろが倫子の代理として舞を披露しました。
その衣装の文様は「向蝶むかいちょう文様」でした。
向蝶むかいちょう文様
2匹のちょうが向かい合って、丸く円を形どる文様です。
蝶は不思議な虫です。
いも虫や毛虫からさなぎに。
なんとさなぎの中身は液体。
やがて美しい蝶へと変身。
この神秘な現象から、蝶文様には不老不死・再生の願いが込められました。

帝謁見みかどえっけん鳳凰ほうおう文様

ドラマの中、まひろは一条天皇に謁見えっけんし、政治においての自分の意見を述べてしまうという大胆な行動に出ました。
その時に着ていた十二単衣の表衣うわぎの文様が鳳凰ほうおう文様でした。
鳳凰ほうおう文様
鳳凰ほうおうは中国の伝説の霊鳥れいちょうです。
※ 尊く不思議な力を持つ鳥
徳の高い君子がみかどになると、この世に姿を現すと言い伝えられてます。
そのことから、鳳凰文様には平和の願いが込められています。

越前の頃 … 窠中唐花かのなかにからはな文様

父、為時ためときがやっと官職につき越前へ赴任ふにんすることになりました。
金銭的に余裕ができ、まひろも絹の衣装に変わりました。

文様は浮線綾ふせんりょう文様です。
浮線綾ふせんりょう文様

浮線綾ふせんりょう文様は、別名「臥蝶ふせちょう文様」とも呼ばれる代表的な有職ゆうそく文様です。
※ 平安時代からの宮廷や公家が用いた伝統文様

円を4分割して それぞれに、蝶が羽を広げて休んでいる(している)ように花びらを配置した図柄です。

母になる … 唐花丸からはなまる文様

裕福な夫のおかげで、まひろの衣装も豪華になりました。
道長の妻“倫子”と色違いの同じ文様の衣装に。

文様は「唐花丸からはなまる文様」です。
唐花丸からはなまる文様
唐花からはな」とは、中国から伝わってきた空想上の花のことです。
花びらの先が3つのを描いているのが特徴です。
その唐花を円形に配置した文様が「唐花丸」。
平安時代の宮廷や貴族に好まれた伝統文様でした。

『源氏物語』執筆 … 撫子なでしこ文様

夫を亡くした“まひろ”は失意の中、物語を書くことが心の支えとなりました。
道長の依頼で、『源氏物語』を執筆した時期の衣装です。

文様は「撫子なでしこ文様」です。
撫子なでしこ文様
奈良時代、万葉集の中で子どもを示す比喩ひゆとして歌われてきた撫子なでしこ
『枕草子』には「草花の中で、一番おもむきのある花は撫子」と書かれています。

可憐な花が「でる様に大切に育てた子のよう」と、「撫子なでしこ」の名がついたそうです。
撫子文様には「可愛い」「笑顔」という意味があります。

女房装束にょうぼうしょうぞく窠中菊かのなかにきく文様

まひろの書いた『源氏物語』が一条天皇の心をとらえました。
天皇の「(まひろに)また会いたい」という言葉から、まひろの女房としての出仕しゅっしが決まりました。

女房装束の唐衣からぎぬ(1番上に着る衣装)の文様は「窠中菊かのなかにきく文様」です。
窠中菊かのなかにきく文様
文様の中に菊が配置された文様です。

9月9日の重陽ちょうようの節句は菊の節句とも呼ばれ、平安時代から伝わる行事の1つです。
薬効もあり、不老長寿の力を持つと言われる菊の花びらをお酒やお茶に浮かべて飲み、健康を願います。
菊文様には延命長寿、無病息災、邪気払じゃきばらいの意味があります。

女房装束 … 唐花菱からはなびし文様

『源氏物語』を書き終えた頃のまひろの女房装束です。
この唐衣からぎぬ(1番上に着る衣)の色、濃紫をゴールとして、まひろの衣装は薄い紫色の差し色から徐々に広く濃く変化していったそうです。

文様は「唐花菱からはなびし文様」です。
唐花菱からはなびし文様
唐花菱からはなびし文様とは、花びらの先端をとがらせて 菱形ひしがたにした文様です。

菱形の形は、古来より特別な形。
子孫繁栄や無病息災の力が宿っていると信じられていました。
ひな祭りで菱餅ひしもちを飾るのも、その力にあやかるためです。

女房装束 … 比翼ひよく文様

『源氏物語』を書き上げた頃に着ていた表衣うわぎ(唐衣の下に着る衣装)です。

文様は「比翼ひよく文様」でした。
比翼ひよく文様
中国の伝説の鳥「比翼ひよくの鳥」からできた文様です。
雄・雌、それぞれ1つのつばさと1つの眼しか持たないため、雄鳥と雌鳥が隣り合って互いに協力しなくては飛ぶことができません。
この文様は、仲むつましい男女の象徴となりました。
平和な世を目指した道長とまひろに相応ふさわしい文様です。
「比翼の鳥」転じて、2つの同じ素材の文様を向き合わせて1つの図柄にした文様を「比翼ひよく文様」と呼ぶようになりました。
鳥の場合、片方は口を開け、片方は閉じています。
物事の始まりと終わり「阿吽あうん」を意味するのだとか。

「完」嵐が来るわ!! … 臥蝶丸ふせちょうまる文様

「光る君へ」最終話、死を覚悟している道長の命を長らえさせようと、まひろが看病している時の衣装です。
この衣装を着て旅に出て、「道長さま、嵐が来るわ」と言ったシーンでドラマは終わりました。

文様は「臥蝶丸ふせちょうまる文様」です。
臥蝶丸ふせちょうまる文様
臥蝶丸ふせちょうまる文様は「浮線綾ふせんりょう文様」とも呼ばれます。
宮廷や貴族が用いた、平安時代からの代表的な伝統文様です。

蝶が羽を広げてしているように花びらを円状に配置した図柄です。
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